志望動機
ある社長さんが「あなたの今までの成果を知りたい」と思っているところに「経験はないですが入社すれば誰よりも頑張りたいと思います!」と言ってきた人に対して「違う、そうじゃない」みたいなつぶやきをみたのでこれを書いています。
もっと具体的に言うと「趣味でRailsのシステムを開発運用しています。こちらがそのURLです」みたいな人が来て欲しいけど、入社希望の人は「御社に入社すれば誰よりも頑張ります。Railsを扱うことにもすごく興味があります!」みたいな人が来た感じです。
雇用側としては「Rails扱えるようになってから来てくれない?」という気持ちなんだと思います。
専門的な技術が必要な仕事なのに、未習得の状態で何故その仕事に就こうとするのでしょうか?
このような現象が起きるのは何故なんでしょうか?
答えの一つは人の能力を見抜くより、熱意や意欲という分かりやすい部分を評価するほうが簡単だからです。
熱意のある人とない人だと、雇われるのは熱意のある人です。
例えば、何も前提知識がない状態で人事の人がエンジニアの面接をしたら、まつもとゆきひろより松岡修造のほうを高く評価しそうな感じがしませんか?
このように、応募側が成果ではなく熱意を武器にしがちなのは雇用側に問題があると思っています。
ところで、多くの企業はビジョンやミッションといった存在理由を持っています。
ゲームの会社であれば「ゲームを通じて世界中の人々に楽しさを届ける」といった感じで。
そして、それをベースとして企業文化や会社としての個性を打ち出しています。
まぁ、あくまで表面上は、ですが。
ベンチャーや中小の歴史の浅い新興企業などは人の入れ替わりが激しく1、2年で所属する人がガラッと変わって、会社という箱は同じでも中で働いている人は全然違う人達になり、社内文化も変わってしまう、というのはよくあります。
なんだったらピボットして会社のミッション自体も変わったりします。
大企業でも配属部署によって人間関係も文化も全然違っていたりします。
この話はここではこれ以上しません。
とりあえず、会社にはビジョンやミッションがあり、企業文化という集団属性が存在しているのです。
そして、面接を受けに行くと会社で行っている事業なりサービスなりを説明されて「どうですか?楽しそうじゃないですか?」と聞かれるわけです。
自社のビジョンやミッション、企業文化との親和性を確認するわけです。
それに対して自分の思いを伝えないといけないわけです。
志望動機というやつです。
で、この「志望動機」がやる気アピールを引き出している犯人なんです。
「志望」というは未来に対するただの願望ですし、「動機」というのも自分の中にあるただの思いに過ぎません。
最初の例に上げた「Railsを扱うことにもすごく興味があります!」はRailsを扱いたいという志望も動機も含まれているので「志望動機」として成立します。
逆に「自分で作ったRailsのシステム」はただの成果物であって、志望にも動機にもなりえません。
志望動機はどうあがいても会社が向いている方向性と自分が目指している未来とに接点があるものでないといけないのです。
会社が「医療で世界を救いたい」と思っているところに「自国のアニメ文化を世界に広めたい」と思っている人が来てもマッチングできないのです。
しかし、実務として会社が求める人材が法律に詳しい人で、応募者がその専門知識がある人であるならば、志望動機が合わないだけで落としてしまうのはとてももったいないことです。
「自国のアニメ文化を世界に広めたい」と思っている人であっても、その人が医療に対しての技術なり知識があるのならば、医療で世界に貢献することはできます。
ただ、志望動機を第一ハードルとしてしまうと、入社するためには会社の目指しているビジョンに合った「志望動機」をでっち上げないといけません。
その結果、会社で扱うサービスなり技術なりについて自分は興味を持っていますよ、と表明することが自己アピールの最適解になってしまうのです。
そして、自分を相手側に合わせて何かをアピールしようとするとどうしても「〜がしたいです」という表現が多くなるのは仕方のないことだと思うのです。
自分の過去の経験と成果が会社のビジョンと一致しているとは限らないからです。
自分の歴史と会社のビジョンから逆算して、いい感じのストーリーを捻出しないといけないのです。
捻出されたストーリーはあくまで架空なので、当然、表現は未来形にならざるをえません。
逆に会社が求める実務能力を持っている人からすれば「僕それできますよ」ぐらいしか言うことがないはずなのです。
「PHPを書ける人募集」という募集をしたのであれば「僕はPHPが書けるのできました」だけで立派な志望動機になりえるはずなのです。
そこを募集要件以外の別のところで人を選別しようとするから「誰よりも勉強してアウトプットして結果を出したいと思っています!」という人が生まれるのです。
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