< 天才を殺す凶器 | GARMIN ForeAthlete 245 >
文章量:約1900字

リテラシーの誤謬

今回は、リテラシーの有無だけが大事なのではなく、リテラシーそのものの価値を疑うことも大事、というお話です。

ITリテラシーやメディアリテラシーといった単語が世間ではよく使われています。

そもそもリテラシーとは「読解記述力」のことです。

読む力と書く力です。

さらに砕けて表現すると、理解する力と表現する力です。

ITは世間一般的な認知だと、コンピューターかインターネット周りの知識を指すので、ITリテラシーとは「コンピュータとインターネットについて知識があり活用できる」となります。

そして世間的には、ある特定分野における判断力の有無をあらわすために使われることが多いです。

そこを逆手に取って、リテラシーがない人を「情弱」や「リテ低」などと揶揄して使ったりしています。

さて、ここまではよく聞く当たり前の話です。

リテラシーの有無自体はよく話題に上がりますが、リテラシーそのものの真贋を気にする人は少ないと思うのです。

ある現象に対して理解と表現が出来たとしても、解釈をそもそも間違えていたら何にもなりません。

例えば、自分の学生時代は鎌倉幕府の誕生は「良い国つくろう鎌倉幕府」で1192年だと暗記していました。

テストでも「1192年」と書けば正解をもらえていました。

しかし、最近の教科書だと鎌倉幕府の成立は1185年と書いてあるそうです。

今、自分がテストを受けて「1192年」と回答すれば不正解になってしまいます。

さらにです。

この1185年ですら「確定」しているわけではないのです。

近い未来にまた別の有力な学説が登場し、違った年度に改定される可能性も十分にあります。

何をもってして鎌倉幕府が成立したと定義するか?という根本的な問題もはらんでおり、個人的には年数そのものには知識的価値は無いと思っています。

このように「知識」があって「回答」できたとしても、それが間違っていればなんの意味もないですし、そもそも、その知識に価値があるのかどうかも疑わしいのです。

ところで、いきなり話がガラッと変わりますがサンドウィッチマンの「カロリーゼロ理論」をご存知でしょうか。

柿の種ってね、食べても太らないんですよ。小っちゃいし。辛いからカロリーを自然と消費する。よってカロリーゼロ。

カロリーは中心に集まる性質がある為、ドーナツなどの中心が空洞の食べ物はカロリーゼロ。形もカロリーゼロを表してるから太らない。

カツカレーは、カレーのカロリーととんかつのカロリーが一緒になることで、カロリー同士がぶつかり合ってけんかするのでカロリーゼロ。

カロリーは熱に弱く、110℃以上に耐えられないから揚げ物はカロリーゼロ。

といった、いろんな食べ物をそれっぽい理屈をつけてカロリーをゼロにしてしまうネタです。

ちなみに自分が一番好きなネタは「新幹線の中で食べる駅弁は、カロリーが新幹線の速度についてこれないのでカロリーがゼロになる」です。

この「カロリーゼロ理論」は、ほぼ誰が聞いても明らかに「ネタ」だと分かるので、笑って受け流すことができます。

しかし、極稀にこの理論を真に受けて「何を食べてもほとんどカロリーゼロにできるじゃん!好きなもの食べ放題だ!」となって無限に飲食を繰り返し、取り返しのつかない状態になる人もいるかも知れません。

みんながカロリーゼロ理論をネタだと解釈できるのはリテラシーがあるおかげです。

しかし、カロリーに対するリテラシーがないと、カロリーゼロ理論自体がその人にとってのリテラシーとなってしまう危険があります。

カロリーゼロ理論ほど極端な理屈であればネタだと認識できて一蹴できますが、世の中の理論や法則と呼ばれるもののほとんどは、実はこのカロリーゼロ理論と同じくらい根拠薄弱であることが多いのです。

少し前に科学と宗教は親しい存在であると書きましたが、世の中にあふれている知識はみんなが思っているより不確定なのです。

リテラシーがあるといっても、その根拠がカロリーゼロ理論のような、現実とは違った知識に依っていれば砂上の楼閣となってしまいます。

「そういったトンデモ理論に騙されないためにリテラシーが必要なんじゃないか!」という意見を言いたい人もいると思います。

今まで散々書いてきたように学問や科学ですら今日と明日で常識が塗り替えられる可能性を秘めた世界なのに、いはんや巷にあふれる知識であればをや、です。

リテラシーの有無だけでなく「それがほんとに正しいか?」を常に問い続ける姿勢も必要なのです。

20年前であれば“<font color=‘red’>“と書いていればよかったですが、2020年の今、フォントタグを使ってしまうとリテラシーの有無を問われてしまいます。

Tag: 哲学