< マジョリティーという道徳 | 喩話相応 >
文章量:約1900字

確認を「確認する」で済ますな

なにか失敗が起きたときの再発防止策でよくあるのが「より一層気をつける」や「しっかり確認を行う」である。

しかし、これは再発防止<策>ではなく、再発防止への心構えでしかない。

心構えだけで失敗がなくなるのなら、バッターの打率は10割になるはずだし、ピッチャーは毎回完全試合を達成できる。

しかし、どれだけ強い気持ちを持とうが、プロの世界で打率が4割を超えることはほぼないし、ノーヒットノーランですら数年に一度見れるかどうかぐらいである。

心構えが大事なときもあるが、大事なのは具体的な対応である。

一見して対策と思える「気をつける」「確認する」は、具体的な対応ではない。

お釣りの渡し間違いを防ぐために「確認する」はあまり意味がない。

意味がないというか、そもそもお釣りの金額を確認せずにお釣りを返す人はいない(はず)。

確認した上で間違うのである。

そこを「よりしっかり確認する」としたところでさほどの違いは生まれない。

そこで、「自分以外の人にも金額を確認させる」とすれば、これは<策>として有効である。

他人による確認作業の追加は心構えではなく、具体的な対応の追加である。

完全にミスを無くすことはできないが確率を下げることはできる。

このような対応はいわゆる「ダブルチェック」と呼ばれるもので、メジャーな対策方法であり、お札のお釣りを渡す際によく行われる。

ちなみに、ダブルチェックを発展させてトリプルチェックや4人目、5人目……と増やしていけばより堅牢になるんじゃないかと思われるが、とある実験の結果によると、トリプルチェック以降は反対に精度が下がるらしい。

やはり人間がやる以上、ミスを切り離すことはできないので、最近では機械にお金を入れて機械がお金を渡す仕組みに置き換わりつつある。

機械が最強じゃん、という話は一旦さておき、「確認する」ときに大事なのは、具体的な判断基準があるかどうかだ。

例えば「きれいな(プログラミングの)コードであること」という確認事項があったとして、あなたは絶対的な判断を下せるだろうか?

自分がきれいだと思っていても、場合によっては汚くみえるコードになるかもしれない。

そもそも絶対的な「きれいなコード」は存在しない。

total = a + b;

と書いてあって、「何も問題ないな」と思っても、プロジェクトによっては

c = a + b;

gokei = kakaku + zei;

のほうが読みやすい、と言われるかもしれない。

そこで大事になるのが判断基準である。

いわゆるコーディング規約だ。

「変数名は可能な限り短くする」であれば2番めのコードが採用され、「変数名はわかりやすく日本語をローマ字表記したものにする」であれば3番めのコードが採用される。

主観的にきれいかどうかは横に置いておくとして、判断基準があれば一貫性のある判断を下すことが可能になる。

社会全般において大事なのは普遍性や一貫性なので、可能な限り誰であっても同じ判断が下せるようになっているのが望ましい。

「お砂糖少々」だと分量がバラバラになるが「お砂糖10グラム」だと毎回同じ分量になり、料理の再現性があがる。

主観に任せて判断を下すと、人によって判断がバラバラになり、安定したアウトプットが出せなくなる。

つゆだくの牛丼を頼んだわけではないのに、つゆだくの牛丼が提供される恐れがある。

全国チェーンのフランチャイズで店ごとの提供料理に違いが発生すると困る。(某カップ麺のように東西であえて違いをつけているようなケースもある)

北海道で提供されるビッグマックと、沖縄で提供されるビッグマックはマクドナルドの看板を背負っている以上、同じものでなければならない。(ちなみにビッグマックはアメリカでもスペインでも中国でも日本と同じ)

このように、個人の頑張りや心構えではなく、普遍性や一貫性の維持こそが、確認の本質といえる。

吉野家の牛丼にシェフの気まぐれアレンジなど不要である。

よって、個々人の主観ではなく「〇〇は△△か?」や「100℃で3分」などの客観的な判断基準を設定することが価値のある「確認」となる。

確認作業は可能な限り主観要素を排除すべきなのだ。

さらにいうと、「確認する」の類似例で、頑張らなければいけないことを「頑張る」で済ませてもいけない。

「ダイエットを頑張る」だと、なんの具体性もなく、思いつきの「今日は晩ごはん抜き」と、それっぽいことに何回かチャレンジして、結局は3週間もすれば今までの生活に逆戻りし「今度こそダイエット頑張るぞい」と無限ループを繰り返すだけになる。

「毎日2キロ走る」や「昼は糖質を摂らない」と具体的なアクションを設定すべきだ。

アクションを設定すればあとはそれを愚直にやるだけだ。

頑張りをいちいち宣言するな。黙って具体的なアクションを設定してそれをこなせ。

頑張る目的は結果をだすことであり、他人からのフィードバッグを得ることじゃないはずだ。

というか頑張るな。習慣にしろ。

できなければ、それは頑張りが足りないんじゃなくて、あなたに才能がないだけだ。

最後の方はテーマと関係ない話になった気がするけど、今回はこのへんで。

Tag: 仕事